9月26日という日付に、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。私がこの日付を調べると、そこには日本の近現代史が凝縮されたような、強烈な二面性が浮かび上がりました。
それは、自然の恐ろしい力によって刻まれた深い記憶と、人間の知恵が生み出した技術革新の祝賀という、まったく異なる側面です。この記事では、9月26日という一日が持つ多層的な意味を解き明かしていきます。
この日を知ることは、私たちが向き合い続けるテーマそのものを知ることにもつながります。
台風襲来の日|日本の防災意識を変えた記憶 🌀
9月26日と聞いて、多くの日本人が思い浮かべるのは「台風」かもしれません。この日は、日本の防災史において決して忘れることができない、重要な一日です。
統計的に多い「台風襲来の日」
9月26日は「台風襲来の日」と呼ばれています。これは、統計的に一年で最も台風の上陸が多いとされる「特異日」の一つだからです。
お祝いの日ではなく、過去の災害を記憶し、防災意識を新たにするための大切な日として位置づけられています。特に昭和の時代、この日に日本列島は甚大な被害を受けました。
昭和史に残る三大台風の悲劇
偶然にも、昭和の歴史に残る三つの大きな台風が、この9月26日近辺に日本を襲っています。
洞爺丸台風(1954年)|青函連絡船の悲劇 🚢
1954年(昭和29年)、台風15号(洞爺丸台風)が北海道を襲いました。この台風により、津軽海峡を航行していた青函連絡船「洞爺丸」が転覆・沈没します。
乗員乗客1,155名が犠牲となる、日本の海難史上最悪級の大惨事となりました。この悲劇は、後の青函トンネル建設を強く後押しするきっかけにもなりました。
狩野川台風(1958年)|伊豆・関東を襲った豪雨
1958年(昭和33年)、台風22号(狩野川台風)が伊豆半島と関東地方に壊滅的な被害をもたらしました。特に静岡県の狩野川流域で大規模な洪水が発生し、1,200名以上の方が亡くなりました。
伊勢湾台風(1959年)|未曾有の高潮被害 🌊
1959年(昭和34年)、日本の災害史を塗り替える「伊勢湾台風」が上陸します。この台風が引き起こした「高潮」により、名古屋市南部をはじめとする伊勢湾岸の低地帯が広範囲にわたり水没しました。
死者・行方不明者は5,000人を超え、戦後の自然災害としては最悪の被害となりました。この被害の大きさは、国全体の防災体制を見直す大きな転機となります。
悲劇を乗り越え「災害対策基本法」へ
伊勢湾台風による壊滅的な被害を教訓とし、1961年(昭和36年)に「災害対策基本法」が制定されました。これは、日本の防災行政の根幹となる、非常に重要な法律です。
9月26日は、多くの尊い命が失われた悲しい日であると同時に、その教訓から未来の命を守るための仕組みが生まれた日でもあります。
技術革新の日|日本語デジタル化の幕開け 💻
暗い記憶だけではありません。9月26日は、日本の技術史において輝かしい一日でもあります。
ワープロ記念日|世界初の日本語ワードプロセッサー
9月26日は「ワープロ記念日」です。1978年(昭和53年)のこの日、東芝が世界で初めて日本語ワードプロセッサー「JW-10」を発表しました。
私が驚いたのはその価格で、なんと630万円もしたそうです 😲 重量は220kgもあり、個人が使うものではなく、企業や官公庁向けの巨大な機械でした。
「かな漢字変換」という大発明
このJW-10が画期的だったのは、「かな漢字変換」という仕組みを実用化した点です。それまで、数千文字もある漢字の入力は非常に困難で、日本のデジタル化を阻む大きな壁でした。
キーボードで「かな」を入力すれば、機械が自動で漢字に変換してくれる。この発明こそが、現代の私たちがパソコンやスマートフォンで当たり前に日本語を入力できる、すべての始まりでした。
オフィス革命からIT大国へ
JW-10の登場は、日本の電機メーカー間に激しい開発競争を生みました。富士通の「OASYS」やNECの「文豪」などが続き、ワープロは急速に小型化・低価格化していきます。
1980年代にワープロが普及したことで、オフィスの生産性は飛躍的に向上しました。この「日本語をデジタルで扱う」という経験の蓄積が、1990年代以降のパソコン時代、そして現在のIT社会の礎を築いたと言えます。
文化と文学を偲ぶ一日 ✍️
9月26日は、日本の文化や文学にとっても深い意味を持つ日です。
八雲忌|小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の命日
文学の世界では、9月26日は「八雲忌(やくもき)」として知られています。これは、明治時代に活躍した作家、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の命日です。
彼はギリシャ生まれのアイルランド人でありながら日本を深く愛し、1890年に来日しました。『怪談』に収められた「耳なし芳一」や「雪女」などの物語は、皆さんも一度は触れたことがあるかもしれません。
日本の心を世界に伝えた功績
八雲の功績は、単に古い物語を収集したことだけではありません。急速な近代化の中で失われつつあった、古い日本の美意識や精神性を、詩的な文章で描き出し、西欧世界に紹介した点にあります。
彼が日本文化にいかに深く溶け込んでいたかは、俳句の世界で彼の命日「八雲忌」が秋の季語として認められていることからも分かります。外国出身の人物の忌日が季語となるのは、極めて異例なことです。
9月26日の多様な顔|国際デーから語呂合わせまで
この日には、他にも世界的なテーマや、ユニークな記念日が存在します。
核兵器の全面的廃絶のための国際デー 🕊️
9月26日は、国連が定めた「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」です。核兵器がもたらす脅威について世界中の認識を高め、その完全な廃絶を目指す日です。
歴史上唯一の被爆国である日本にとって、この国際デーは非常に重く、大切な意味を持ちます。平和について改めて考える日でもあります。
言葉遊びが生んだ記念日
現代の日本では、楽しい語呂合わせによる記念日も制定されています。
くつろぎの日 ☕
日付の「9(く)」「2(つ)」「6(ろ)ぎ」という読み方から、喫茶店チェーンのコメダが制定しました。
大腸を考える日
「9」が結腸の形に似ていることと、「腸内フ(2)ロ(6)ーラ」の語呂合わせから、森永乳業が制定しました。健康について考えるきっかけになりますね。
世界の出来事
国外に目を向けると、1962年のこの日にイエメン・アラブ共和国が成立した「イエメン革命記念日」や、ヨーロッパの言語多様性を推進する「ヨーロッパ言語の日」などがあります。
9月26日生まれの著名人・芸能人 🎂
この日を誕生日に持つ方々も、多方面で活躍されています。私がリストアップしただけでも、これだけ多くの方々がいらっしゃいます。
日本国内で活躍する方々
- 天童 よしみ(演歌歌手)
- 光石 研(俳優)
- 木根 尚登(ミュージシャン / TM NETWORK)
- 佐藤 藍子(女優、タレント)
- 池谷 幸雄(元体操選手、タレント)
- 吉谷 彩子(女優)
- 梶原 徹也(ミュージシャン / 元THE BLUE HEARTS)
- 佐野 瑞樹(俳優)
- 我那覇 和樹(サッカー選手)
- 秋山 莉奈(タレント、女優)
海外で活躍する方々
- オリビア・ニュートン=ジョン(歌手、女優)
- ブライアン・フェリー(ミュージシャン)
- リンダ・ハミルトン(女優)
- ミヒャエル・バラック(元サッカー選手)
- ユン・シユン(俳優)
まとめ
9月26日という一日を深掘りしてみると、実に多くの顔が見えてきました。自然の猛威という恐ろしい記憶、技術革新による社会の変化、そして文化的な追悼。
私が感じるのは、この日が「破壊と創造」の両面を併せ持つ、日本の近現代史そのものを象徴するような日だということです。台風への備えを再確認し、便利なデジタル機器のルーツに思いを馳せ、異国の作家が愛した日本の心を見つめ直す。
9月26日は、私たちに多くのことを問いかけ、思い出させてくれる一日です。

